まったく同じことが、2度も起こった。

先日の「トイレ騒動」からわずか数週間後。
チエと共にデートを楽しんでいた俺たちだったが、その日も相変わらず俺の体調はすぐれず、腹痛に苦しみ、少しだけトイレに籠ることになった。

そして俺がトイレから出ると、またも、彼女の姿が見当たらない。

すぐに彼女に電話をして居場所を突き止めると、先日とまったく同じように、腹痛に苦しみながらもダッシュでチエのもとへ駆けつけた。

案の定。

彼女は怒りに満ちた表情で、「また他の女でしょ? 今度はメールでもしてたの?」と言い放つ。

俺は、全身の力が抜けた。

大きな溜息が出た。

誓うが、俺はある特定の女性と一緒にいる際、他の女性のことを考えることなんて無いし、もちろん、電話やメールをすることも一切ない。

俺はチエが好きだったから、彼女の偏見や、誤解や、暴言の数々を許した。
彼女がそういった破壊的な言動に走る原因は俺にあるものだと思っていたし、それに、女性がこの手のヒステリーを起こすのは至極当然のこと。女性特有の「1ヶ月に1回」だと納得し、彼女が癇癪を起こすたびに、自分自身を説き伏せ、チエの機嫌を取り戻すことに専念していた。
しかし、これら一連の出来事は、俺の心の中に彼女への不信感を募らせるキッカケとなってしまった。

後に、俺はまったく同じことが2度も起こった、この一連の出来事を『スターバックス事件』と名付けることにした。

つづく