嘘かホントか、その信憑性は不明だが、俺が信じている「キスの起源」がある。

その話は、古代ローマ時代まで遡る。

当時はまだ、葡萄から作られるワインは非常に貴重なもので、ごく一部の限られた人間だけが、その官能的な味わいと、後に訪れる魅惑的な「酔い」を堪能することができた。

そして、ワインを飲むことを許されていたのは男性のみであったという。
あまりにも高価であったため、男たちは女性にワインを飲ませることはしなかった。

それが自分の妻であったとしてもだ。

つまり、その時代に女性がワインを口にすることができるのは、事実上は皆無。

男たちは、そんな貴重なワインを自宅に大切に保管していた。

さて。話が盛り上がるのはここからだ。

彼らは、「自分が外出している間に、妻がワインを飲んでいるかもしれない」と考えていた。

そこで、外出から戻り、家に帰るとすぐに、妻の口元に自分の鼻を近づけ、あるときは妻の唇を舐め、口元からワインの香りが漂っていないかを探った。

女性たちがワインを飲んでいないことを確かめるために、自らの鼻と唇、そして舌を使った!

大切に保管しているワインを、妻が隠れて飲んでいないかどうか確かめるための男たちの行動。
しかし女性にとっては、その行為は最高にエロティックで心ときめかせるものであった。

──これが、俺が信じているキスの起源。

でもさ、ワインの香りがするキスって…すごく素敵だと思わないか?