ゲームには少なからず必勝法が存在する。
定跡(または定石)やセオリー、パターンが存在し、それに従えば、概ね勝利を収めることができる。

では、恋愛に、必勝法は存在するのだろうか?
恋の炎を燃やし続けるためのセオリーは?
恋愛関係を維持する秘訣は?

俺とバイオレットの関係は非常に曖昧で、脆く、壊れやすい状態だった。

俺は、自信を失っていた。

問題は、バイオレットとはじめて寝た夜。…俺は勃たなかった。

かろうじて義務を果たすことはできたが、このハプニングにより、俺の、バイオレットに対する男としての自信は地に落ちてしまった。

これは俺にとって非常に珍しいことだった。酔っていてもこうなることは稀。
EDか? ただ偶然、本領を発揮できなかっただけに過ぎなかったのか?
様々な不安が俺の頭をよぎる。

彼女に原因があるとは考えられない。それは、絶対にあり得ない。
バイオレットはとびきりセクシーで、男なら誰でも一度は抱きたいと思うほどの美貌を兼ね備えている。
そんな彼女を前に、一時的とはいえ、男性機能が不能になってしまうなんて。

四六時中、彼女の中に入り込もうとする男性はたくさんいる。…精神的にも。肉体的にも。
俺は彼らから一歩抜きん出てこのポジションを確保することができた。しかし。俺は今回の一件でスランプに陥ってしまった。

問題の原因は俺自身にある。
しかもこれは、精神面の問題だろう。
果てしなく美しく、魅力的な彼女の裸を目にし、ガチガチに緊張してしまったことは否めない。

彼女を満足させられたかどうかもわからず、俺の自信は大きく揺らいでいた。
バイオレットとの関係をワンナイトラヴで終わらせたくはない。
俺は、今回のこの不手際、不祥事を、どうしても挽回する必要があった。

男にとって、それほどセックスは重要なものだ。ここまでセックスに執着するのも男としては当然だ。

俺には、まだ前戯が足りないのだろうか? 精神面の前戯が?
それは、肉体的な前戯や愛撫よりも極めて重要なことだ。肉体的には一つになることができたが、果たして、精神的には?
精神的には、俺たちはまだひとつに繋がっていないのではないか?

すべてを確かめたかった。
そしてその後、数週間のうちに、俺たちは何度も身体を重ねることになった。

恋の炎を燃やし続ける必勝法。
このときの俺にとっては、【セックス】それ以外になかった。

何よりも重要なのは、セックスだ。
セックスがうまくいけば、すべてうまくいく。
男女間には多くのギャップが存在するが、この溝を埋め、お互いを惹き付けあうための最善の手段、それがセックスだ。

あるとき、バイオレットが俺に聞いた。

「夏紀、私のドコが好き?」

俺はガールフレンドに対してお世辞を言ったりはしない。彼女の顔から上半身、そして下半身へと指を這わせながら、同時に本音を語った。

「オマエの身体の虜になってるよ。真っ直ぐな瞳が好き。キラキラしてて。感じやすい耳も。エッチな唇も。喋り方と、声も好き。笑って話す会話の内容はもっと好きだ。やわらかいオッパイも。肌の質感も完璧。すごく綺麗。太腿の間の感触も、脚のラインも大好き。最高にセクシーだと思ってるよ」

バイオレットはリラックスして俺の言葉に聞き入り、優しい微笑みを浮かべている。

俺も彼女に同じ質問をした。

「じゃあ、バイオレットは? 俺のドコが好き?」

バイオレットは平然と答えた。

「アソコが大きいところ」

…俺は再び自信を取り戻すことができた。