その後、マリアとは数日間、連絡を絶っていた。

もともと、彼女との関係はその一夜限りの恋で終わらせるつもりだった。
俺は既に、「マリアをオトナの女にする」という使命を果たし、それだけで既に充分満足していたからだ。

とうぜん、彼女のほうからは、俺の携帯に電話がかかってきたり、メールが送られたりしてきたが、俺はことごとく、それらをすべて無視。

彼女には申し訳ないが、マリアとの距離を縮めることは、俺にとって何のメリットもないように思えた。…むしろデメリットしか思い浮かばない。
俺のプライベートに踏み込まれ、俺が築き上げている「ハーレム」を台無しにされる危険性がある。
複数人の女性との交際は、ただでさえ危ういバランスの上に成り立っている。
その均衡を崩すような危険因子はなるべく排除したいし、「修羅場」と言われるような「面倒なこと」に巻き込まれることは絶対に避けたい。

しかし、俺はここで考えた。

彼女には、「初めての男性が GEKI で良かった」というような感謝の気持ちを抱いてもらいたい。

このまま彼女を無視し続けたり、「ワンナイトラブだった」と伝えるのは酷だろう?
それは彼女を傷つけるだけになる。
それにもしかしたら、俺が原因で男性不信に陥ってしまうかもしれない、とも考えた。

…「面倒なこと」に巻き込まれるのもイヤだが、一人の女性を不幸せにしてしまうのはもっとイヤだ。

そこで俺は、少しずつ、時間をかけて彼女から離れ、フェードアウトしていこうと目論んだ。

彼女、マリアはただでさえ恋愛経験が少なく、繊細な女性だ。
だから、細心の注意を払って優しく接することにしよう。
でき得る限りたくさんの愛を示そう。

「マリアをオトナの女にする」という使命は、このまま続行しよう。

彼女の身体をオトナの女にすることには成功した。次は、内面に磨きをかける番だ。

そして同時に、彼女を『教育』しようと決めた。

ロストヴァージンを済ませたばかりの26歳の女性に、男心と恋愛のイロハを徹底教育。

その目的は、俺と別れることに対する免疫を身につけさせること。
そして頃合を見計らい、俺はマリアとの関係を終わらせる。

さらに、恋愛に関するあらゆる知識と、男心の真実を理解させ、どんな男性でも自在に堕とすことができるほどの魅力と誘惑の手法を伝授すること。

…なんだか面白そうだと思わないかい?
少なくとも俺は、猛烈に燃えたね。

こうして密かに、対マリア、短期集中恋愛講座が開設した。