今夜はパーティー!
Episode.2 「Dancin' Queen」

俺:「名前は?」

???:「ビー☆〒%▲!」

俺:「なに??」

???:「ビージャル!」

BGMがうるさくて、彼女の声が聞こえない!
彼女の名前を聞き取るために、俺たちはもうすでに、頬と頬がくっつきそうなほど近づいている。

彼女の名前は「ビージャル」と言った。

出身はイギリス。ただし、インド人の血も混じっているため肌の色が濃く、俺好みの「エキゾティック」な容姿だ。
まだ20代前半の学生で、「神経科学」を専攻しているらしい。

Hung Up / MADONNA

Time goes by... so slowly

Every little thing that you say or do
I'm hung up
I'm hung up on you
Waiting for your call
baby night and day
I'm fed up
I'm tired of waiting on you

Time goes by so slowly for those who wait
No time to hesitate
Those who run seem to have all the fun
I'm caught up
I don't know what to do

Time goes by so slowly
I don't know what to do

Ring, ring, ring goes the telephone
The lights are on but there's no-one home
Tick tick tock it's a quarter to two
And I'm done
I'm hangin' up on you

I can't keep on waiting for you
I know that you're still hesitating
Don't cry for me
'cause I'll find my way
You'll wake up one day
But it'll be too late

Waiting for your call (Waiting for your call)
I'm fed up
I'm tired of waiting on you

ビージャル:「私、ダンスが好きなの!」

マドンナのBGMに合わせ、踊りながら話をするビージャル。彼女のダンスは、明らかに誰よりも派手で、エキサイティングで、目立っていた。
「ヤヴァい。カワイイ」というのが、俺の素直な感想。
音楽に合わせて踊りまくっている彼女の姿は、俺の眼を釘付けにした。彼女は今夜のDancin' Queenだ!

俺:「オマエ、すっげぇセクシーだな!」

彼女は顔を赤らめる。
俺たちのすぐ側には互いの友人たちが大勢取り囲んでいるが、会話やダンスに夢中になっている彼らをよそに、俺とビージャルは見えない壁を築き、二人だけの世界を作り上げていた。
言葉を重ねるたびに、俺たちの距離が近づいていく。

「あなたの髪、綺麗ね!」そう言って彼女は俺の髪を撫でる。

「オマエの髪も綺麗だよ。それに、いい匂いがする。俺、『匂いフェチ』なんだよ。わかる?」と俺。

「匂いフェチ」という言葉は、おそらく、彼女は理解していない。しかしそんなことはどうでも良かった。俺は彼女の髪を手に取り、その髪にキスをした。
恍惚とした表情で、うっとりと俺を見つめるビージャル。
その表情を確かめ、俺は彼女の唇にキスをした。

ここまでに要した時間、わずか3分。

直後、俺たちの間にスペイン人の女性が割って入ってきた。
どうやらビージャルの友人のようだ。
俺とビージャルの電撃的な展開を目の当たりにして驚いたため、彼女の気を確かめたたかったのだろう。

なにやら2人で話をはじめたが、英語のヒアリングのスキルがない俺には、何を話しているのかまったく聞き取れない。

居心地悪く感じた俺は、友人のBPを連れ出し、二人でトイレに立て籠った。

彼は「いっせー、スゴい!」という台詞を連発した。

短時間、それも、わずか数分間で初対面の女性を誘惑してキスまで持ち込んだ俺の手腕を目の当たりにし、驚きを隠せない様子だった。

「マジすげー!」
「ビビったよ!」とBP。

フランス人の男性の口からこのような言葉を聞けるのは本当に愉快。
彼は、その後も感嘆の声を漏らし続けた。

さらに、トイレからでてきた俺たちを待ち受けていたのはもう一人の友人、JAだ。

JAは、「あの女は難しいよ」と言った。

いや、「難しい」なんて言われても、既にキスまでしちゃったし。もうすぐにでも攻略できるよ。

「でも、あの子、日本人が好きだからオマエならイケるかも」とJA。

OK。わかってる。オマエの言葉を信じる。

BPとJA、彼ら2人との一連のやり取りを経て、酔いも醒め、多少冷静になってきた俺は、再びビージャルに近づき、彼女を部屋の隅にまで連れてきた。

もう誰も俺たちを邪魔する者はいなかった。

そして俺たちは、何度も何度もキスをした。