どうして彼女は、傲慢な言動や軽卒な行動を繰り返したのだろう?

それらの原因になったものは何だろう?

そして、俺はなぜ、もっと早く決断することができなかったのか?

例えば。
「フランス語を学びたい」という彼女のために、俺はそれを学ぶための絶好の機会を幾度か設けた。…が、それらすべてを、彼女は無駄にした。
今思えば、そのときに決断すべきだった。

例えば。
彼女に、仕事に関する簡単な質問をした際、その返答が「なぜ?」、「なぜ?」、「なぜ?」…だった。
深い理由なんて無い。ただ単に、質問に即答して欲しいだけだ。
彼女は「どうして知りたいの?」と俺の真意を探ろうとする。そんなくだらない駆け引きを繰り返す彼女が嫌になった。
今思えば、そのときに決断すべきだった。

例えば。
明らかにそれとわかる利己的な態度。
「私は…」、「私ね…」、「私が…」、「私に…」、「私の…」、「私を…」と、自分の話しかしないこと。
彼女の話を聞くのが苦痛になってきた。
今思えば、そのときに決断すべきだった。

例えば。
基本的なマナーや一般常識の欠如。言い間違いや、誤字脱字の多さ。
身勝手な解釈や、思い込みや、迷信の類い。
まずはじめに疑いの目を向ける、否定的な考え方。
今思えば、そのときに決断すべきだった。

例えば。
彼女と出逢ってすぐの頃、彼女は自分のことを「素直じゃない」と語った。
その言葉を聞いた時、俺は彼女に対して強い違和感を抱いた。俺が好きなのは素直な女性だし、男女関係における多くの過ちは、結局、「素直じゃない」心が発端となって生み出されるからだ。
今思えば、そのときに決断すべきだった。

彼女が持っている、偏見や、誤解や、欺瞞や、迷信。
そういった「負のエネルギー」が、日に日に目立ちはじめてきた。

仏の顔も三度まで。という言葉がある。
俺は仏様ではないが、それでも、度重なる彼女の過ちを何度も許してきた。
そう。何度も。何度も。
その度に、俺の心には、彼女に対する大きくて深い溝が出来上がっていった。
しかし俺は、魅惑的なセックスの快楽を失うのが勿体なくて、ずるずると相性の合わない彼女との関係を続け、2人の間の溝を無視し続けたのだ。

ハッキリ言って、こんな男女関係は、不完全だし、不健全だし、不自然だ。

俺は、彼女との別れを意識しはじめた。

そして「審判の日」は、全く予期せぬ形で訪れることになった。

つづく。