今夜はパーティー!
Episode.6 「Happy Birthday Stéphane !!」

突然、俺は新たに開催されるパーティーの招待状を受け取った。

友人、ステファンのバースデー(彼の誕生日は12月17日)と、彼の日本滞在延長を同時に祝うパーティーだ。

2008年12月19日。金曜日。時刻は21:00時を過ぎていた。

ステファンが住むマンションへ向かい、彼の部屋の前まで辿り着くと、ちょうどその部屋の扉の前で、友人のレーコさんと遭遇した。
彼女ももちろん、このパーティーの参加者だ。

「よぉ。レーコさん!」

挨拶する俺に対し、彼女は開口一番こう言った。

「夏紀、この前の女の子とはどうなったの?」

『この前の女の子』というのが誰のことを指しているのかわからない。思い当たる女性が数人いるからだ。
「誰のことだっけ?」と訊くと、彼女は「バーの入り口でキスしてたじゃん!」と答えた。

…ビージャルか、もしくはユカさんのことか。

俺が適当に話を誤摩化していると、レーコさんは「アンタ、酒飲んで酔っぱらってるか、女を口説いてるかのどっちかだよね」と言った。

それは違うよレーコさん。

『酒飲んで酔っぱらっている』か、『女を口説いている』かのどちらかではない。

俺はただ純粋に『酔っぱらって女性を口説いているだけ』だ。

ただ、彼女の言いたいことも理解できる。
ここ最近、俺はあまりにも派手な振る舞いをしすぎていた。調子に乗りすぎていたのだ。

軽率だった自分の行動を戒めるために、今回のパーティーでは大人しく過ごそうと思った俺は、ステファンの部屋に入る前に、『今夜は呑まない。誘惑には屈しない。誰かを口説くこともしない』と心に誓った。

事実。
今回、俺は「表舞台」には立たなかった。
部屋の片隅で、男友達の「ヤン」、「ニコラ」、「レミ」と語り合い、その後はステファンと共にキッチンに陣取り、『たこ焼き』を作ることに専念。

一番目立った行動をしたのは、ステファンのために作って持っていったデザート、「チョコレートのタルト」を、参加者全員に切り分け振る舞ったときくらいだ。

あるイギリス人の女性は、俺が作ったそのデザートを頬張ると、「Oh my god...」と感嘆のため息を漏らした。
…彼女がビージャルだったら良かったのに。

そして、最も女性に近づいたのは、大好きなフランス人の美女「セシル」と会話したときくらい。もちろん、この間ずっとアルコールは一滴も口にしていない。

さらに「良い子」に徹した俺は、深夜24:00時の鐘の音と共に帰路に着いた。

さて。
パーティーの嗜み方として、今回の俺の行動は「健全」だったのだろうか?
それとも「不健全」だったのだろうか?