俺の、“超”感情的教育
──茨城県南部、陸の孤島「つくば」で恋愛ができる? さあ、それはどうだろう?

ヴァレンタイン・デーに相応しい、こんな話がある。覚悟はいいかい?

数年前、ある大阪出身の女性が、とある独立行政法人の研究所に就職し、俺の住む街、ここ、つくば市にやってきた。
彼女は比較的地味だが、ウィットに富んでいてにじみ出るような魅力があり、たちまち「つくば」ならではの理想の独身男と交際をはじめた。そのお相手の男性は、同じ研究所に勤めるサラリーマン。年収は600万円ほどだろう。

二週間後、二人は手を握りあい、それからさらに二週間後、ようやく二人はキスをした。共に夜を過ごしたのはそれからさらに二ヶ月後のことだった。
さて。ある日のこと、彼は、後に「つくば駅」となる界隈に建設中のマンションのモデルルームへ彼女を連れて行った。

二人は室内を物色しながら、不動産ブローカーを交えていろいろな話をした。

そしてその日の晩、彼が彼女を公務員宿舎の前まで車で送ってきたとき、火曜日にディナーを一緒に食べようと約束をした。その当日の火曜日。彼女は急用ができたため、彼に電話して、都合が悪くなったので次の機会にしよう、と言った。
そしてその日を境に、彼の様子がおかしくなってきた。

彼は、ストーカーと化してしまったのだ。

彼女は「今週中に電話をするわ」と言った。

それから二週間、まったく音沙汰がなかったので、痺れを切らした彼は彼女に電話をかけた。しかし彼女には繋がらない。

彼女はそれっきり彼との連絡を絶った。
この話で興味深いのは、二人の間に何が起きたのか、当の彼には見当もつかなかったという点である。

おそらく彼にとって、モデルルームを見学することは特別な意味合いがあったのだろう。

俺に言わせれば「ジ・エンド」である。
彼は、終わっている。

「つくば流の愛の終わり方」がどのようなものか、人から聞くこともできるだろうが、あえて俺が教えよう。
彼も、彼女も、すぐにわかるようになるだろう。

真実の世界へようこそ。

Candace Bushnell(キャンディス・ブシュネル)の書いた「SEX AND THE CITY」のなかで、胸焦がすような恋愛の舞台背景として、燦然と輝いていたニューヨークの街並みは今も健在である。しかし、この物語の舞台は陸の孤島「つくば」であり、マンハッタン島のような華やかな立地条件とはほど遠いのである。

愛のキューピッドは、すたこらさっさと逃げ出してしまった。

いったいいつの頃から、人が「愛している!」と口にするのを耳にすると、「ストーカーか?」と疑問を持たずにいられなくなったのだろう。いつの頃から、見つめ合うカップルを見かけると、おやおや、そんなに我を忘れて大丈夫? と思うようになったのだろう。いつの頃から、「僕は今、灼熱の恋をしているんだ」と打ち明けられると、「つまり、ストーカーだな?」と思うようになったのだろう?

「つくば」では、それなりに多くのセックスが行われているが、どれも童貞や処女から脱皮するためのセックスか、もしくは結婚が前提となっているもので、とても恋愛とは呼べない。近頃では、誰もが大勢のストーカーに囲まれているが、本物の恋人はひとりもいないのだ。──たとえベッドを共にする相手がいたとしても。

さて、大阪出身の彼女の話に戻ろう。それから半年の間に、彼女はさらに“経験”を重ね、告白してきて、それを断るとストーカーと化す男たちと付き合って、ようやく事情が飲みこめてきた。

「つくばの人間関係というのは、基本的に病的なものなのね」と。
「でも、心から恋愛を楽しみたいと思ったら、どうすればいいの?」と彼女は言った。

お嬢さん、それがしたいのなら、俺と付き合うしかないだろ?

(注:この記事は、Candace Bushnell著『SEX AND THE CITY』をパクっています)


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おすすめ度の平均: 4.0

5 うんいーぃ(^O^)/
2 これが読めれば立派なNew Yorker? でも幻滅!
4 ドライなキャリー
4 読み物としては良いけど…
4 怖かったですが、これがNY女性の本音のようで。