男を虜にしたい?

それなら、とっておきの方法がひとつある。

男を虜にする最善の方法は、視覚に訴えかけること。これに尽きる。
「聴覚で恋をする」女性に対し、男性は「視覚で恋をする」生き物だ。

あなたが誰よりもセクシーに振る舞うならば、男はいとも簡単に「堕ちる」だろう。

…余りにもシンプル過ぎて軽率に聞こえるかもしれないが、往々にして真実というのはこのように単純なものである。特に、男心の真実は。

男の頭の中は常に、ある欲望で満たされている。その欲望とはつまり『性欲』のことなのだが、ここで引き合いに出すのはどちらかというと『男のサガ』といったニュアンスに近い。
『性欲』であれば、かなりの労力を必要とするが、ある程度自己制御できるのに対し、『男のサガ』を刺激された場合の男の反応は条件反射。男性には防御する術が無い。

女性の美しさや性的魅力に対峙した男性が、我を忘れて一心不乱に夢中になってしまう現象があるが、これを世間一般では『悩殺』という。

男性にとっての現実であり、悲劇。
女性にとっては朗報であり、喜劇。

『悩殺』とは、『男のサガ』を刺激された男性が条件反射的にあなたの虜になる単純明快なシステムだ。

女性の『隙(スキ)』は、男性の『好き』という気持ちにつながると、ウマいことを言った表現を何かの本か雑誌で読んだことがあるが、これは真実だ。
男心を掴むためのゴールデンルール。悩殺への最短距離で、極めて強力な媚薬を紹介しよう。

例えば、衣類の露出度を高くするのは基本中の基本。
プライベートではほぼ必ずスカートやワンピース。それはチラリズムやエロティシズムをさりげなく意識し、それとなく男性にもわかるように「スキ」を演出する。
つまり、いつもよりもスカートの丈を短くしたり、深くスリットの入ったスカートを履いたり、見えそうで見えないキワドいスタイルを意識する。
ブラウスの一番上のボタンをはずして着崩し、バストをアピールすることも忘れないように。男性の視線をその一点に集中させることができれば、オマエの勝ちだ。

華奢でヒールの高い靴や、上品で控えめにキラキラ輝くアクセサリーも重要な装備。
裸足でサンダルを履き、しかもその足の指先にリングが輝いていたら…。いますぐにでもあなたの前に跪き、その爪先にキスをしたい。

意外に思われるかもしれないが、厚化粧は厳禁だ。メイクアップに時間と労力をかけるくらいなら、そのかわりに素肌を美しく保って欲しい。むしろ、ノーメイクでも構わない。艶やかな肌の質感こそが男の欲望を刺激する。
この場合のキーワードは『美白』ではない。『美肌』だ。

ちなみに俺は、『チャイナドレス』+『ガーター・ベルト&ストッキング』の組み合わせが大好きだ。
チャイナドレスもガーター・ベルト&ストッキングもどちらも単体でも強力な武器になる。それを履いているだけでも、その女性に好意を抱いてしまう男性が存在するくらいだ。無論、俺もその一人だ。

セクシーなランジェリーを身に纏い、髪をアップにしてひとつにまとめ、大胆なポーズを見せつけられるとひとたまりも無い。
また、一糸まとわぬ姿よりも、シルクのキャミソールを一枚羽織っているだけの姿のほうが『悩殺率』が高くなる。

淫らな格好でベッドの上で待ち伏せするのもいいだろう。

想像力を刺激するのも非常に有効。それも、間接的でまわりくどい表現ではなく、ストレートに直接的なほうがいい。

たとえば、レストランで食事をしている最中に、テーブルの下でヒールを脱ぎ、俺の脚に絡めてきたり、軽いボディタッチは挨拶代わり。何処を触るかはあなたの想像と手腕に任せる。
公共の場で、二人きりになった瞬間に態度を豹変させ、しかしまたすぐにクールに装ったり、会話の節々にエロスを漂わせれば、男性の頭の中はあなたのコト、いや、あなたとのコトでいっぱいに満たされるだろう。

そして決め台詞は、彼の耳元で「今日は下着を履いていないのよ」と囁く。

…実際にこれらすべてのことを俺に対して仕掛けた女性が過去に一人だけいたが、俺が彼女に夢中になったことは言うまでもない。
彼女こそ、俺を恋愛心理の世界へと引き込んだ張本人。「ヒトミ」という名の女性だ。

さて。具体的な例を挙げてみたが、俺の好みと偏見に満ちていると思ったかい?
…確かにその通り。否定はしないが、心得て欲しい。これらは男性代表の意見であり、すべての男性に共通するポイントだ。

マリアは、俺が語る一連の理論の節々で、「何それ!有り得ない!」という台詞を連発していた。

俺からしてみれば、「有り得ない」と言う彼女のほうが有り得ない。
俺は単に、真実を語っているだけなのだから。

つづく。