二日前のことだ。
外は真夏日。完全な炎天下で、俺のこの部屋の気温も尋常じゃないくらいに上昇していたと思う。
それなのに、俺は、エアコンも点けず、トレーナーを着込み、毛布を二枚もかぶってベッドの中でうずくまっていた。

猛烈な悪寒を感じていた。
風邪の初期症状。しかもかなりヒドい。
頭の先から足の爪先まで、全身を筋肉痛のような痛みが走り続けている。
鼻と喉がつまり、苦しくて、呼吸もままならない。
眠りたいのに眠ることができす、寝返りを打つ気力さえも乏しくなっていた。

なんとか携帯を操り、主要なガールフレンド全員にメールを打ち、風邪で寝込んでいる旨を打診し、誰かが見舞いに来てくれることを期待していた。

しばらくして、俺の安否を気づかうメールが返信されてくるのと同時に、数人から電話もかかってきた。

「薬は飲んだ?」
…俺の部屋に、薬の類い(サプリメント等も含めて)は一切無い。

「熱、計った?」
…もちろん、体温計なんてのもあるはずが無い。

「ゴメンね。私の伝染しちゃったね?」
…よくわかってるね。でも実際に誰の風邪が伝染ったのか俺にはわからない。

「病院に行ったほうがイイんじゃ無い?」
…そもそもそんな気力は無い。

「大丈夫?」
…ぜんぜん大丈夫じゃない。

7月17日、18日の二日間。安否を気づかうメールや電話は何度となく入ってきた。しかし、寝込んでいる俺の部屋にやって来て、見舞ってくれた女性は一人もいなかった。
悪いことは続くのだろうか?
それとも、体調不良の影響で意識が朦朧としているせいで、この状況のマイナス面にばかり思考が集中しているだけだろうか?

普段、病気や怪我とはまったく無縁で、しかも俺が体調を悪化させたのは極めて急な出来事だった。みんなそれぞれ事情があり、この出来事に対処できなかった、ということは理解している。…少なくとも、そう思うように努めた。

複数人の素敵なガールフレンドがいて非常に満足しているが、俺には、こんなときにこそ、そばにいてくれてる女性の存在が必要なんだと思った。

一人きりで、孤独を感じている寂しさからだろうか。

普段はまったく感じることがない感情が込み上げてくる。

寒くて、痛くて、苦しくて。そして寂しかった。
…その夜、俺は涙を流した。