今夜はパーティー!
Episode.4 「ナンパとジェラシー

俺は、友人の女の子レーコさんの車に同乗させてもらい、つくば市二の宮・洞峰公園の目の前にあるバー(Pine's Bar)へ向かった。

先に到着していた友人たちが俺を出迎えてくれる。
しかしどうやら、ユカさんはまだ来ていないようだ。彼女は他の友人や同僚たちと行動を共にしていたため、俺とは別行動になっていた。

そこで俺は、悪友のフランス人「JA」と「BP」と一緒に共謀し、三人でナンパ合戦を繰り広げた。

俺が「サチコ」という名の女性と話をしていると、そこにBPが加わった。
直後、JAが俺の隣にやってきて、「いっせー、ちょっと来い」と言う。
彼を追って店の隅の比較的静かな場所まで行くと、彼は俺に言った。

「オマエ、ルール違反だぞ!」

「何? 何が?」
「ルール違反」と言われても、俺にはまったく何のことかわからない。
「俺、何かしたか?」

JAによれば、「サチコ」は一番はじめにBPが声をかけた女の子で、「まだオマエの順番じゃない」というのが彼の言い分だった。

「JA、オマエ、勘違いしているぞ」と俺。

つい先ほど、俺はBP本人から「彼女はあまり好みじゃない」ということを直接聞いている。
それにそもそも、俺は彼女をナンパする気はない。

第一、彼女を見てみろ。
俺に接する態度と、BPに接する態度が、明らかに違う。

BPには、楽しそうに、しかも積極的に話しかけているのに、俺と話しているときの彼女は退屈そうだった。

しかし俺の説明を聞いても、JAは引き下がらない。
さすがフランス人だな。自分の主張はとことん貫き通す姿勢だ。
些細な誤解で貴重な時間を無駄にしたくない。ここは俺が退くべきだと思った。

「サチコはやめろ」と彼が言う。
「OK、わかった」と俺は応えた。

しばらくすると、別のパーティーに出席していた友人たちや、ユカさん、そしてなんと、ビージャルもパーティーに合流してきた。

はじめに、ビージャルには軽く挨拶を。
そして一週間ぶりのキス。
そして抱擁。
そしてダンス。
そしてキス。
そしてもう一度キス…。

…この光景をユカさんに見られていなくて良かった。ただし、大好きなフランス人の女の子「セシル」にはバッチリ目撃されてしまったが…。

さて。ビージャルがいつものように踊りはじめたので、その隙に俺はユカさんを部屋の隅に連れて来て、彼女が飲んでいた白ワインを奪った。
俺は彼女の髪に触れ、「綺麗だね」とかなんとか、テキトーな口説き文句を並べた。
「彼女はいるの?」とユカさんが俺に訊いた。
当然、「ああ、いっぱいいるよ」と答えた。
その台詞を聞いても動じない彼女。「じゃあ私も仲間に入れてもらおうかな」と、俺の瞳を覗き込む。
俺は彼女にキスをした。

ユカさんを抱き寄せたままの体勢で、俺たちはずっと語り合っていた。
しかし、俺がほんの少しの間ユカさんから目を離した隙に、別のイギリス人の男性が割り込んできて、ユカさんに声をかけたようだ。ユカさんは再び俺との会話を楽しみたい様子だったが、俺はビージャルの存在も気になっていたため、その場から離れ、ビージャルを探した。

いつものように踊りまくっているビージャルを捕まえ、ソファへ誘導。
肩を抱き寄せようとすると、「さっき、他の女とキスしてた!」と彼女が言った。

しまった!
やっぱり見られてたか。

弁解はせず、「したよ」と答えた。
「何で? 誰? 彼女?」とビージャル。
質問攻めにされる俺。
「あの子とは、さっき知り合ったばかりだ。だから『彼女』じゃないよ」
彼女の瞳の奥に『嫉妬の炎』が宿っていたのを、俺は見逃さなかった。
明らかに機嫌が悪い。

なんとか挽回しようとして、俺はあらゆる誘惑のテクニックを総動員させた。

「ビージャル、彼氏は作らないの?」と俺。
「作らない。今は」と彼女が言った。
少し前に、交際していた彼氏と別れたばかりで、まだその彼のことが忘れられないとのことだった。
「俺がその穴を埋めようか?」
彼女は返事をする代わりに、俺の瞳を見つめた。
そして、俺の唇にキスをしてくれた。

ユカさんの視線も気になったが、構わない。俺たちは皆に見せつけるような熱いキスを交わし続けた。

一晩のうちにいろいろな出来事があった。
あまりにもたくさんのことを起こしすぎた。
ここに書き連ねたのは氷山の一角だ。
それほど密度の濃い、刺激的な一夜だった。
俺は疲れてきた。

今夜のパーティーはそろそろお開きの時間だ。
俺はその場に居合わせていた多くの友人たちに別れを告げ、一人きりで店を出た。

夜空を見上げると、満点の星空が広がっている。

俺はその星空の下を一人きりで歩き、自分の車が停めてある駐車場まで戻り、運転席のシートを倒し、トランクに常備してある毛布にくるまり、そしてそのまま眠りに堕ち、一夜を明かした。